ロンドンのサウス•バンク•センターという所で、恒例の「服役囚、触法精神障害者、入管施設の拘留者によるアート」展が11月25日まで開催されています。(http://www.koestlertrust.org.uk/) コースラー財団主催のもので、今年は50周年を迎えたそう。毎年ロンドンの中心部で世の中の日陰の存在の人達が制作したアートが、展示/販売されていると知ったのは、アートセラピーの勉強をしている時でした。
私自身は以前、お仕事でそう言った方々に関わった経験があり、刑務所や精神病院の拘禁病棟、入管施設の中の状態を知っているので、彼らが社会復帰の目的というだけでなく、自由のない環境において制作活動に携わる重要性というのを痛感していました。人権云々の問題というより、まずイギリスでは再犯率が高く、収監施設に戻って来る人が多いという現実があります。(この話を始めると育児と教育の制度の話しから始めなければならないのですが•••)。つまり、収監施設が収監するだけになっていて、システムとして機能していないという事なんですね。
サウス•バンク•センターに展示されている作品は数多くの応募者の中から選ばれた作品なので、芸術性も優れています。でも、私が注目したのは、売る事を目的として普通のアート•ギャラリーに展示されている作品に比べて、ものすごくはっきりと感情表現が出ている作品が多くある点です。彼らの多くは、自分たちが「アウトサイダー」である事を自覚していて、その感情が露骨に表れている作品が多いのです。その分、おどろおどろしい作品もあり、私の友人の何人かはそういった作品は気持ちが悪いので見たくないと言います。
大学院でのアート•セラピーの勉強で余り良い思い出はありませんが、今振り返って役に立ったと思うのは、患者さん達が描いた「おどろおどろしい作品」を見る事に慣れ、それでも患者さん達の感情を汲み取り冷静に接する事が出来るようになったと言う事でしょうか。(これは日常生活でニュースなどの気持ちの悪い映像を観た時などにも役に立っていますが)
移民が多いイギリスなので、当然収監施設に入っている人達も二世、三世の人達が多く、文化の違い、ある宗教特有の表現なども展示されている作品に表れています。
こういった展示会が増えてくると、何故、犯罪者と呼ばれる人が作り出されるのか、どうしたら犯罪行為に走る事を防げるのかを考える機会も増えて行くのではないでしょうか。彼らは、怪物でもなく、同じ人間であり、私達とはまったく関係ないとは言えないのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿